SQL Serverの高可用性と冗長化: スナップショット、トランザクション、マージレプリケーションの違い

SQL Serverにおける高可用性とデータ冗長化は、企業システムの安定運用に不可欠です。その中でも「レプリケーション」は、複数のサーバー間でデータを同期し、障害発生時のリカバリや負荷分散に役立ちます。

本記事では、SQL Serverのレプリケーションの種類である スナップショットレプリケーション、トランザクションレプリケーション、マージレプリケーション の違いについて解説します。

SQL Serverのレプリケーションとは?

レプリケーションとは、SQL Serverでデータベースの変更を他のサーバーへ複製する機能です。主に以下の目的で使用されます。

  • 可用性の向上: 予備のサーバーにデータを複製し、障害発生時に切り替える
  • パフォーマンス向上: 読み取り専用のレプリカを作成し、負荷分散を実現
  • データ統合: 地理的に離れたサーバー間でデータを統一

スナップショットレプリケーション

概要

スナップショットレプリケーションは、指定時点のデータベースの完全コピー をサブスクライバーに配信する方式です。

特徴

  • リアルタイム性が低い(変更は次回のスナップショット実行時に反映)
  • データの整合性を確保しやすい(常に一貫性のある状態を配信)
  • 更新頻度が低いデータ向け(マスターの変更が少ない場合に適している)

ユースケース

  • マスターデータ管理(商品リストなど、頻繁に変更されないデータの配信)
  • データの一括配布(静的なデータを複数の拠点に配布)

トランザクションレプリケーション

概要

トランザクションレプリケーションは、パブリッシャーで発生したデータ変更(INSERT、UPDATE、DELETE)をリアルタイムまたはほぼリアルタイムでサブスクライバーへ適用 する方式です。

特徴

  • 変更部分のみ配信(スナップショットと異なり、フルコピーを行わない)
  • リアルタイム性が高い(変更が即座にサブスクライバーに適用される)
  • 一方向のデータ配信(サブスクライバー側ではデータ更新不可)

ユースケース

  • レポート専用データベース(本番環境の負荷を軽減)
  • 災害復旧(DR)対策(変更をリアルタイムで別サーバーへ送信)

マージレプリケーション

概要

マージレプリケーションは、パブリッシャーとサブスクライバーの両方でデータの更新を許可し、双方向で同期する 方式です。

特徴

  • 双方向のデータ同期(サブスクライバー側での変更も同期される)
  • 変更の競合(コンフリクト)解決機能を持つ
  • オフライン環境でも利用可能(再接続時に同期)

ユースケース

  • モバイルアプリケーション(一時的にオフラインになり、後で同期)
  • 分散データ管理(複数の拠点でデータを更新)

レプリケーションの比較表

項目スナップショットレプリケーショントランザクションレプリケーションマージレプリケーション
データ配信方式フルコピー変更部分のみ双方向同期
リアルタイム性低い高い中程度
サブスクライバーの更新可否できないできないできる
主な用途静的データ配布DR対策・レポートDB分散データ管理

演習問題

問題 1

スナップショットレプリケーションの特徴として 誤っている ものを選びなさい。

  1. 一定間隔でデータをフルコピーする
  2. リアルタイムのデータ変更をサブスクライバーに即座に適用する
  3. データの整合性を確保しやすい
  4. 更新頻度が低いデータ向け

問題 2

トランザクションレプリケーションが適しているユースケースはどれか?(複数選択可)

  1. 地理的に分散した拠点での双方向データ同期
  2. ほぼリアルタイムでのデータ更新反映
  3. 変更頻度が少ないデータの一括配布
  4. 読み取り専用のレポートデータベース構築

解答例

解答 1

誤っているものは「2」
→ スナップショットレプリケーションはリアルタイムでのデータ更新には向いていない。

解答 2

適しているのは「2」と「4」
→ トランザクションレプリケーションは リアルタイム性が求められる 場面(2, 4)に適している。


まとめ

SQL Serverのレプリケーションは、用途に応じて適切な種類を選択することが重要 です。

  • スナップショットレプリケーション: 静的なデータ配布に適している
  • トランザクションレプリケーション: 変更をリアルタイムで同期する
  • マージレプリケーション: 双方向でデータを管理する

適切なレプリケーション方式を選択し、SQL Serverの可用性と冗長化を最大化しましょう。