SQL Serverの高可用性と冗長化:クラスタリングにおけるディスク共有とディスクレス構成の考え方

SQL Serverを企業システムの基盤として利用する場合、高可用性(HA:High Availability)と冗長化の設計は欠かせません。特に、障害時にデータベースが迅速に復旧し、システムのダウンタイムを最小限に抑えることが求められます。

本記事では、SQL Serverの高可用性と冗長化を実現するためのクラスタリング手法として、「ディスク共有構成」と「ディスクレス構成」を比較し、それぞれのメリット・デメリット、適用シナリオを解説します。


ディスク共有構成とディスクレス構成の比較

SQL Serverのクラスタ構成には、大きく分けて「ディスク共有構成」と「ディスクレス構成」の2種類があります。

ディスク共有構成(Shared Disk)

ディスク共有構成では、複数のノードが共通のストレージ(SAN/NAS)にアクセスし、同一のデータベースを利用します。

メリット

  • データの一貫性を維持しやすい
  • ストレージ上のデータがそのまま引き継がれるため、フェイルオーバーが高速

デメリット

  • 共有ストレージが単一障害点(SPOF)となる
  • 高価なストレージが必要
  • ストレージ障害時のリカバリーが困難

適用シナリオ

  • 企業の基幹システム
  • 低遅延が求められるオンプレミス環境

ディスクレス構成(Shared Nothing / Always On)

ディスクレス構成では、各ノードが独立したストレージを持ち、データのレプリケーションによって同期を行います。

メリット

  • 共有ストレージが不要なため、単一障害点を回避可能
  • 地理的に離れたデータセンターにも適用可能
  • クラウド環境との親和性が高い

デメリット

  • データの同期にオーバーヘッドが発生
  • フェイルオーバー後の整合性チェックが必要

適用シナリオ

  • クラウド環境(Azure、AWS、GCPなど)
  • DR(ディザスタリカバリ)構成

クラスタ構成の考え方

クラスタリング構成を選定する際は、以下の要因を考慮する必要があります。

RTO(復旧目標時間)とRPO(復旧目標時点)

  • RTOが短いほど、ディスク共有構成が有利
  • RPOをゼロに近づけるには、同期レプリケーションを利用する

コストと運用性

  • SANを導入できる場合はディスク共有構成が有利
  • クラウド環境ではディスクレス構成の方が適切

データの一貫性とパフォーマンス

  • OLTP向けにはディスク共有構成が適している
  • データレイクやBI用途ではディスクレス構成も有効

データストレージの冗長化戦略

データストレージの冗長化を考える際、以下のポイントを考慮します。

ストレージレベルの冗長化

  • RAID 1(ミラーリング):障害耐性を向上
  • RAID 10:可用性とパフォーマンスのバランスが取れる

クラウドストレージの冗長化

  • Azure Managed Disks(ゾーン冗長ストレージ)
  • AWS EBS(マルチAZレプリケーション)

バックアップとスナップショット

  • 定期的なフルバックアップ
  • ログバックアップを活用し、障害復旧を迅速化

演習問題と解答例

問題 1:SQL Serverクラスタリングの種類

以下のクラスタリング技術の特徴について、それぞれ適切な用語を選んでください。

  1. 物理的な共有ディスクを利用し、複数のノードが1つのデータベースを管理する方式
  2. 各ノードが独立したストレージを持ち、データをレプリケーションする方式
  3. フェイルオーバー時にディスクの所有権を切り替えてデータを維持する方式
選択肢

A. Always On 可用性グループ
B. フェイルオーバークラスタリング
C. ディスクレスクラスタリング

解答

1 → B(フェイルオーバークラスタリング)
2 → A(Always On 可用性グループ)
3 → B(フェイルオーバークラスタリング)


問題 2:ディスク共有構成のメリット

ディスク共有構成における主なメリットを2つ挙げてください。

解答

  1. データの一貫性を維持しやすい
  2. フェイルオーバー時のリカバリーが高速

問題 3:ディスクレス構成の適用シナリオ

ディスクレス構成が適している環境を1つ挙げ、その理由を説明してください。

解答

適用シナリオ:クラウド環境(Azure, AWS, GCP)

理由:クラウドでは共有ディスクの概念がなく、ストレージの冗長化はレプリケーションによって行うため、ディスクレス構成の方が適している。


まとめ

SQL Serverの高可用性を実現するには、クラスタリングの種類とストレージの冗長化を適切に設計することが重要です。

  • 低遅延と安定したパフォーマンスが必要な場合はディスク共有構成
  • クラウド環境やDR対策を考慮するならディスクレス構成

システム要件に応じた最適なクラスタ構成を選定し、可用性とパフォーマンスの両立を目指しましょう。