SQL ServerのACID特性を理解する:原子性、一貫性、隔離性、耐久性とは?

データベース管理システム(DBMS)は、現代のアプリケーションにおいて重要な役割を担っています。中でも、SQL Serverは信頼性とパフォーマンスに優れたDBMSの一つです。SQL Serverがデータの整合性を保証するために備える「ACID特性」について、皆さんはどの程度理解しているでしょうか?

この記事では、ACID特性(Atomicity, Consistency, Isolation, Durability)の各要素を分かりやすく解説し、実際のSQL Serverでこれらの特性がどのように保証されているのかを具体例とともに学びます。また、学んだ内容を実践できる演習問題も用意しました。


ACID特性とは

ACID特性は、データベーストランザクションの信頼性を保証するための4つの基本原則を指します。以下に、それぞれの特性を解説します。


原子性 (Atomicity)

原子性とは、「トランザクションがすべて成功するか、まったく実行されないかのいずれかである」という特性です。一部だけ実行されて中途半端な状態になることはありません。

銀行口座間でお金を移動する場合、送金元から金額が引き落とされ、送金先に金額が追加されるまでが1つのトランザクションとみなされます。この処理の途中でエラーが発生した場合、どちらのアカウントにも変化がない状態に戻されます。

SQL Serverでは、トランザクション管理を使用して原子性を保証します。以下のSQLはその例です:

BEGIN TRANSACTION;

UPDATE Account SET Balance = Balance - 500 WHERE AccountId = 1;
UPDATE Account SET Balance = Balance + 500 WHERE AccountId = 2;

IF @@ERROR <> 0
BEGIN
    ROLLBACK TRANSACTION;
END
ELSE
BEGIN
    COMMIT TRANSACTION;
END;

一貫性 (Consistency)

一貫性とは、「トランザクションが終了した後、データベースが一貫した状態を保つ」という特性です。トランザクションが実行される前と後で、データの整合性制約がすべて満たされている必要があります。

銀行システムにおいて、口座の残高が負の値になることを防ぐ制約がある場合、トランザクション内で整合性が保たれます。


隔離性 (Isolation)

隔離性とは、「複数のトランザクションが同時に実行される場合でも、それぞれのトランザクションが他のトランザクションに影響を与えない」という特性です。SQL Serverでは、以下の4つの隔離レベルが提供されています:

  • Read Uncommitted
  • Read Committed
  • Repeatable Read
  • Serializable

それぞれの違いを具体例で説明し、性能と整合性のトレードオフについて触れます。


耐久性 (Durability)

耐久性とは、「トランザクションがコミットされた場合、その結果は永続的に保持される」という特性です。電源障害やシステム障害が発生しても、コミット済みのデータは失われません。

SQL Serverは、トランザクションログを使用して耐久性を保証しています。


SQL ServerでのACID特性の実装

このセクションでは、SQL ServerがACID特性を実現するための仕組みについて詳しく説明します。

  • トランザクションログの役割
  • 隔離レベルを指定する方法
  • 整合性制約(PRIMARY KEYやFOREIGN KEYなど)の実装例

演習問題

ACID特性の理解を深めるための演習問題を以下に用意しました。


演習1: 原子性の確認

以下のSQLスクリプトを実行した際、ROLLBACK TRANSACTIONが呼び出される条件を説明してください。また、このスクリプトが原子性をどのように保証しているかを解説してください。

BEGIN TRANSACTION;

UPDATE Product SET Stock = Stock - 10 WHERE ProductId = 101;
UPDATE Product SET Stock = Stock + 10 WHERE ProductId = 102;

IF @@ERROR <> 0
BEGIN
    ROLLBACK TRANSACTION;
END
ELSE
BEGIN
    COMMIT TRANSACTION;
END;

演習2: 隔離性のテスト

以下の状況を考えてください:

  • トランザクションA: SELECT SUM(Stock) FROM Product;
  • トランザクションB: UPDATE Product SET Stock = Stock – 1 WHERE ProductId = 101;

トランザクションAを「Read Uncommitted」で実行した場合、どのような結果が発生する可能性がありますか?その理由を説明してください。


解答例


解答例1: 原子性の確認

ROLLBACK TRANSACTIONが呼び出されるのは、1つでもSQLステートメントがエラーを発生させた場合です。

このスクリプトは原子性を保証するため、すべての処理が成功した場合にのみコミットされます。

1つでもエラーが発生すると、トランザクション全体がロールバックされ、データベースの状態はトランザクション開始前の状態に戻ります。


解答例2: 隔離性のテスト

トランザクションAを「Read Uncommitted」で実行すると、トランザクションBがコミットされる前の未確定データを読み取る可能性があります。

その結果、SUMの値が正確でない状態になる(いわゆるダーティリード)が発生する可能性があります。


おわりに

ACID特性は、データベースシステムの信頼性を支える重要な基盤です。

本記事では、SQL Serverでの具体例を通じて、それぞれの特性の重要性を学びました。今後は、実際のプロジェクトでACID特性を意識した設計を心がけましょう。