SQL Server Analysis Services (SSAS)でデータマイニング:予測分析に使うSQL Serverのデータマイニング機能の基本操作

データ分析の世界では、ビジネスの意思決定を支援するために大量のデータを処理し、パターンを見つけ、将来の動向を予測することが重要です。

SQL Server Analysis Services (SSAS) は、Microsoft のデータ分析プラットフォームの中核を担い、特にデータマイニング機能を活用することで、予測分析や異常検知を容易に行えます。

本記事では、SQL Server の拡張機能である SSAS のデータマイニング機能を使って予測分析を行う基本操作を詳しく解説します。

記事の最後には、学習内容を確認するための演習問題とその解答例も用意しました。


データマイニングとは?

データマイニングとは、膨大なデータの中から隠れたパターンや相関関係、トレンドなどの有用な情報を抽出し、意思決定や予測に活用するプロセスを指します。

具体的には、統計学、機械学習、人工知能などの手法を用いて、以下のような目的で分析を行います。

  • パターンの発見:過去のデータから類似のパターンや法則性を見つけ出す。
  • 予測分析:将来の傾向やイベントを予測する。
  • 分類:データを特定のカテゴリに分類し、特性や行動を理解する。
  • 異常検知:通常とは異なるパターンや異常な事象を特定する。

例えば、マーケティング分野では、顧客の購買履歴や行動パターンから、今後の購買意欲を予測し、ターゲット広告やプロモーション戦略に役立てることができます。また、医療分野では、患者データを分析して病気の発症リスクを予測したり、異常値を早期に検出するために活用されています。

このように、データマイニングは単に大量のデータを処理するだけでなく、そこから「意味のある知見」を引き出し、実際の業務や研究に活かすための重要な技術として位置づけられています。

SSASデータマイニングの利点

SSAS のデータマイニング機能を活用することで、次のようなメリットがあります。

  • GUIベースの操作が可能:複雑なコーディングなしにデータマイニングモデルを作成できる。
  • 統合環境:SQL Server と統合されているため、ETL(Extract, Transform, Load)プロセスやレポート作成とスムーズに連携できる。
  • 多様なアルゴリズムを提供:クラスタリング、回帰分析、ニューラルネットワークなどの多様なデータマイニング手法が利用可能。

SQL Server でのデータマイニングプロセス

SQL Server でデータマイニングを行う際の基本的なプロセスは以下の通りです。

  1. データの準備:適切な形式でデータを格納し、前処理を行う。
  2. データマイニングモデルの作成:適切なアルゴリズムを選択し、モデルを構築する。
  3. モデルのトレーニング:データを用いて学習させ、パターンを抽出する。
  4. モデルの評価:精度や適用範囲を検証し、必要に応じて調整する。
  5. 予測の実行:新しいデータを入力し、予測結果を取得する。

以下では、実際に SQL Server Management Studio (SSMS) と SSAS を使ってデータマイニングを実行する手順を説明します。


データマイニングの実践:予測分析モデルの作成

データセットの準備

まず、予測分析に適したデータセットを用意します。ここでは、架空の「顧客購買データ」を使用します。

CREATE TABLE SalesData (
    CustomerID INT PRIMARY KEY,
    Age INT,
    Income DECIMAL(10,2),
    PurchaseHistory INT,
    Purchased BIT
);

このデータセットでは、Age(年齢)、Income(収入)、PurchaseHistory(過去の購入履歴)を基に、Purchased(購入の有無)を予測するモデルを作成します。

SSASのデータマイニングプロジェクトの作成

  1. SQL Server Data Tools (SSDT) を開く
  2. 新しい Analysis Services プロジェクトを作成
  3. データマイニングモデルの追加
    • “Data Mining Wizard” を使用
    • “Microsoft Decision Trees”(決定木アルゴリズム)を選択

モデルのトレーニング

データマイニングモデルを作成したら、データを用いて学習させます。

SELECT Age, Income, PurchaseHistory, Purchased
FROM SalesData;

このクエリで取得したデータを SSAS に入力し、予測モデルを構築します。

予測の実行

モデルをトレーニングした後、新しいデータに対して予測を行います。

SELECT Predict([Purchased])
FROM [SalesData]
WHERE Age = 30 AND Income = 50000 AND PurchaseHistory = 3;

このクエリにより、30歳、収入5万、過去の購入履歴3回の顧客が購入する確率を求めることができます。


データマイニング演習問題

問題 1

以下のようなデータを持つ新しい顧客がいる場合、SSAS のデータマイニングモデルを用いて「購入の可能性が高い」かどうかを予測しなさい。

顧客ID年齢収入購入履歴
10145600005
10225300001
10335800002

解答例

SSAS で訓練したモデルを使用し、次のようなクエリを実行。

SELECT CustomerID, Predict([Purchased])
FROM SalesData
WHERE CustomerID IN (101, 102, 103);

この結果、各顧客の購入確率が出力され、例えば 101: 85%, 102: 40%, 103: 70% などの結果を得ることができます。


まとめ

本記事では、SQL Server Analysis Services (SSAS) のデータマイニング機能を活用して予測分析を行う方法を解説しました。

  • SSAS のデータマイニング機能の概要を理解した
  • SQL Server でのデータマイニングプロセスを学んだ
  • 実際にモデルを作成し、予測を実行する方法を習得した

SSAS を活用することで、SQL Server だけで強力なデータ分析が可能になります。ぜひ実際のビジネスデータで試してみてください。