データベースは、システム全体のパフォーマンスに直接影響を与える重要なコンポーネントです。SQL Serverを使用する際、適切なパフォーマンスモニタリングを行うことで、以下の利点を得られます。
- ボトルネックの特定と解消
- サーバーリソースの適切な配分
- クエリ実行の効率化
- ユーザーエクスペリエンスの向上
本記事では、SQL Serverの主要なパフォーマンスモニタリングツールである SQL Server Profiler(プロファイラー)、拡張イベント(Extended Events)、および 動的管理ビュー(DMV) の使い方を学びます。
SQL Server Profilerの活用
SQL Server Profilerとは?
SQL Server Profilerは、SQL Serverの動作を追跡するためのツールです。
クエリの実行時間、デッドロック、インデックス使用状況など、パフォーマンスに関する詳細な情報を収集できます。
基本的な使い方
- SQL Server Management Studio (SSMS)を起動し、[ツール]メニューからSQL Server Profilerを選択します。
- 新しいトレースを作成します。
- サーバーインスタンスを選択し、トレース名を設定します。
- テンプレートを「Standard」に設定すると基本的なモニタリングが可能です。
- 必要なイベント(例:クエリの実行)を選択し、トレースを開始します。
- トレース結果を分析し、長時間実行されているクエリやエラーを確認します。
プロファイラーの利点
- リアルタイムでデータを収集可能。
- データベース全体のパフォーマンスを素早く把握できる。
注意点
プロファイラーはリソースを消費するため、運用環境での長時間の使用は避けるべきです。
拡張イベントの活用
拡張イベントとは?
拡張イベントは、SQL Serverの軽量なモニタリングツールで、プロファイラーの代替として推奨される機能です。
システムへの負荷を最小限に抑えながら詳細なデータを収集できます。
基本的な使い方
- SSMSの[管理]ノードで「拡張イベント」を展開し、新しいセッションを作成します。
- イベントを選択します(例:「sqlserver.sql_statement_completed」)。
- イベントデータを収集する出力ターゲット(例:ファイル、リングバッファ)を設定します。
- セッションを開始し、収集データを分析します。
おすすめのイベント
- sqlserver.lock_acquired: ロック取得状況を監視。
- sqlserver.sql_batch_completed: バッチの実行時間を監視。
拡張イベントの利点
- 軽量でリソース消費が少ない。
- カスタマイズ性が高い。
動的管理ビュー (DMV) の活用
DMVとは?
DMV(Dynamic Management Views)は、SQL Serverの内部状態をクエリで取得するためのビューです。
DMVを利用することで、パフォーマンス問題の診断が簡単になります。
基本的なDMVクエリ例
(1) 実行中のクエリを確認する
SELECT
session_id,
status,
start_time,
command,
text AS query_text
FROM
sys.dm_exec_requests
CROSS APPLY
sys.dm_exec_sql_text(sql_handle);
(2) インデックス使用状況を確認する
SELECT
OBJECT_NAME(IXS.OBJECT_ID) AS TableName,
I.name AS IndexName,
IXS.user_seeks,
IXS.user_scans,
IXS.user_lookups,
IXS.user_updates
FROM
sys.dm_db_index_usage_stats AS IXS
INNER JOIN sys.indexes AS I
ON I.object_id = IXS.object_id AND I.index_id = IXS.index_id
WHERE
OBJECTPROPERTY(IXS.OBJECT_ID, 'IsUserTable') = 1;
(3) クエリの実行プランを確認する
SELECT
query_plan
FROM
sys.dm_exec_query_stats AS QS
CROSS APPLY
sys.dm_exec_query_plan(QS.plan_handle);
DMVの利点
- クエリベースで情報を取得できるため、柔軟性が高い。
- システム全体の詳細な情報を提供する。
演習問題
以下の内容を参考に、SQL Serverのパフォーマンスモニタリングを実践してみましょう。
問題 1: 実行中のクエリの特定
DMVを使用して、現在実行中のクエリのセッションID、状態、開始時間を確認してください。
問題 2: インデックスの効果を確認
DMVを使用して、指定したテーブルのインデックス使用状況(検索、スキャン、更新回数)を確認してください。
問題 3: 長時間実行されるクエリの特定
拡張イベントを使用して、1秒以上かかるクエリを特定するセッションを作成してください。
演習問題の解答例
解答例 1: 実行中のクエリの特定
以下のSQLクエリを使用します。
SELECT
session_id,
status,
start_time,
command,
text AS query_text
FROM
sys.dm_exec_requests
CROSS APPLY
sys.dm_exec_sql_text(sql_handle);
解答例 2: インデックスの効果を確認
以下のSQLクエリを使用します。
SELECT
OBJECT_NAME(IXS.OBJECT_ID) AS TableName,
I.name AS IndexName,
IXS.user_seeks,
IXS.user_scans,
IXS.user_lookups,
IXS.user_updates
FROM
sys.dm_db_index_usage_stats AS IXS
INNER JOIN sys.indexes AS I
ON I.object_id = IXS.object_id AND I.index_id = IXS.index_id
WHERE
OBJECTPROPERTY(IXS.OBJECT_ID, 'IsUserTable') = 1;
解答例 3: 長時間実行されるクエリの特定
拡張イベントで以下の設定を行います。
- イベント「sqlserver.sql_statement_completed」を選択。
- フィルタで「duration >= 1000000」(1秒以上)を設定。
- 出力ターゲットをリングバッファに設定して開始。
まとめ
SQL Serverのパフォーマンスモニタリングを適切に行うことで、システムの効率を最大化できます。
本記事で紹介したプロファイラー、拡張イベント、DMVを活用し、運用環境でのパフォーマンスチューニングを実践してください。
演習問題を解くことで、モニタリングスキルをさらに向上させることができます。